こんにちは。カウンセラーの坂本純子です。
本日のテーマは「繊細な男性が陥りやすい ”強くなくてはいけない” の呪縛」です。
「ふつうに社会生活を送っているし、そこそこ仕事はできると思っています。
役職にも就きました。
結婚もしているし、人並みの幸せを手に入れて順調に人生を送っているように、周りからは見えると思います。
なぜなら自分は、それを目標にがんばってきたから。
周囲の空気を読みながら自分の役目を果たすため、周りの期待に応えるために一生懸命努力してきたつもりです。
だけど内心、人の評価が怖くてビクビクしているんです。
上司や部下、社内の人たちから、自分はどう見られているのかが気になってしょうがない。
こんな心の状態で、これから先も生きていくのかと思うと苦しいです。
この生き方にそろそろ限界を感じているのが本音。
いつも体が重くて疲れがとれないので、健康面も心配です。
長年続けてきた生き方を変えるにはどうしたらいいでしょうか。」
このようなご相談を受けました。
ご相談者さんは30代後半のHSPの気質を持った男性です。
実は、HSPに限らず、同じような悩みを抱えている男性の方、けっこういらっしゃるんじゃないでしょうか。
これは、周りの期待に応えることを優先して、自分を抑圧しつづけてきたことで生まれる悩みです。
外に向いている意識を、自分に向けることができれば解決していきます。
■ 脳内で繰り広げられる思考パターンが悩みのもと
このような人は常に、自分の言動に人がどう反応するかをシミュレーションして、人の気持ちや感情を満たすことを目的に行動しています。
無意識にやっているので自覚はありません。
人の気持ちをつねに読み取り、相手の期待に応えることや相手が喜ぶことにエネルギーを使っています。
そのため脳が疲労しやすいのです。
だから、人とかかわるとグッタリしてしまう。
脳内で繰り広げられる思考パターンが疲れの原因なのです。
■ なぜ人からの評価や他人の顔色ばかり気になるのか
続いて、なぜこのように人からの評価や、他人の顔色が過度に気になるのかを書いていきたいと思います。
まず最初に気がついてほしいことがあります。
それは、自分の本音よりも相手の気持ちや感情を優先することで、得ているものがあるということ。
イメージしてください。
相手の気持ちを考えないで、相手の表情や空気も読まず、自分の本音を相手に伝えたら何が起こりそうですか?
どうでしょう。
相手からどんな反応が返ってきそうですか?
・相手から嫌われるかもしれない。
・相手から受け入れられないかもしれない。
・相手からダメ出しされるかもしれない。
・相手から攻撃されるかもしれない。
など、このような内容を思い浮かべた方が多いと思います。
嫌われないため、受け入れてもらうために、相手の顔色を読み取って、相手の期待に応えるように無意識に行動を起こしていたのです。
悩みのもととなっている行動は、実は自分を守るためのものだったのです。
嫌われたり、受け入れてもらえなかったら、ものすごく傷つくし、悲しいし、独りぼっちになってしまうかもしれない。
これを避けるために相手をよく観察して、相手の期待に応えるような言動をとるように、無意識のうちに思考が働いてくれていたのです。
■ 無意識に働いてくれる思考のパターンはどうやってつくられた?
生れてから現在までの間に起こった出来事の中で、強く感じた感情が影響してしています。
とくに幼いころの親との関係が関わっていることが多いのです。
人は生後3ヶ月くらいから10歳ころまでに愛着形成が行われます。
愛着とは、人と人を結ぶ絆のようなもの。
この時期に、親からの愛情を十分に感じることで愛着が健全に形成されます。
すると、過度に人や物事を恐れることなく、うまくいったことも失敗したことも受け入れながら、ありのままの自分で、人との距離の取り方やかかわり方を学んでいきます。
逆にこの時期、親からの愛情を十分に感じられなかった場合、愛着がしっかりと形成されないケースが多く、そのために常に不安を抱き、人との距離感がつかめずに自分に自信が持てなくなっていきます。
愛着が形成されない環境というと、虐待やネグレクトによるものと考えがちですが、重く深刻なわかりやすい状況だけではありません。
たとえば、ほめられるより指摘されることの方が多かった、自分よりも幼い弟の方がいつも優先されていた、というような一見ささいなことと思われるような状況が原因になっていることが多いのです。
ふつうの家庭に生まれ育って、ふつうに成長してきたけれど、実は親に対して
もっと大切にしてほしかった
もっと受け入れてほしかった
もっと認めてほしかった
という思いを抱えたまま、大人になった人は少なくありません。
特にHSPの人は、親の様子を敏感に感じとるため、ささいなことで愛着の問題を抱えやすいのです。
これが大人になった今、相手の顔色や評価に過度に反応してしまう原因。
大切にしてほしい、認めてほしい、受け入れてほしいという思いが、満たされないまま成長して、大人になっていきました。
そういった未完了の思いが今も心の根っこにあるため、自分が大切にされないこと、認められないこと、受け入れられないことに過度に反応して、なんとしてもこの事態を防ぐため、相手の顔色をうかがって相手の期待に応えるためにがんばってきたのです。
■ HSPだからネガティブな思考パターンがつくられたわけじゃない
HSPの気質と思考パターンは別物です。
HSPだから今苦しいのではなく、愛着の問題を抱えたまま大人になったことが苦しみを生み出しているのです。
心の根っこにすり込まれてきたものが、現在感じている苦しみを生み出しているので、心の根っこと向き合うことで今抱えている悩みを解決することができます。
すると、HSPの敏感さが才能として人生に活かされてきますよ。
■ 満たされないまま放置された過去の感情を思い出す
心の根っこのすり込みを手放して、本来の自分で生きていくことができれば、人の顔色を過度に気にしたり、自分を抑圧することで生まれる悩みは解決していきます。
まずは、以下にワークを用意したので、取り組みながら満たされないまま放置された、過去の感情を思い出してください。
そして、その感情をじっくりと感じてください。
その感情は、子供時代のあなたのものです。
強烈にネガティブなため、感じていることがツラいので、がんばって抑えてきた感情です。
ちょっとイメージしてみてくださいね。
当時、もしその気持ちをわかってくれる人がいたら、子供のあなたはどんなことを感じたでしょうか?
わかってもらえて、ホッとしませんか。
子供のあなたは、このホッとした安心感がほしかったのです。
大人になったあなたが、子供の自分の気持ちをわかってあげてください。
すると、子供のあなたが安心することで、大人になったあなたの中にも不思議と安心感が芽生えてくるのです。
そのために落ち着いて一人になれる場所で、以下のことを思い浮かべてみてください。
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➀ 子どものころお父さんやお母さんの顔色が気になって、本当はやりたいのにガマンしたこを思い出してください。 または、とてもやりたいことなのに、お父さんやお母さんから反対されたため、泣く泣くガマンしたことを思い出してください。
➁ そのとき、ガマンしながらどんな感情を感じていましたか?
(悲しい、腹が立つ、怖い など)
➂ そのときの感情を味わうように、じっくり感じてください。
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いかがでしたか。
どんな思いが出てきたでしょうか。
子供のあなたの気持ちをわかってあげてください。
そして安心させてあげてください。
■ HSPの気質を人生に活かしていこう
繊細な気質のHSPの特徴のひとつに『競争させられたり、見られていたりすると、緊張して普段の実力が出せなくなる。』というものがあります。
刺激に敏感な気質のため、競争によって人が発する「勝たなくてはいけない」という気迫のようなエネルギーや、人から見られているときの自分自身の緊張が刺激となって、そこに飲みこまれて実力を発揮できないという状態が起こりやすいのです。
世の中には、競争となるとがぜんやる気がでたり、注目されることが快感、という人もいます。
そんなタイプの人は、社内で目立つ存在であったり、周りから頼りにされることが多い。
そのような人たちと自分をくらべて、”弱くてダメな自分”というセルフイメージを持ってしまうHSPも少なくありません。
とくに男性の場合、子供のころ「男の子なんだから強くなりなさい」と言われることがよくありますよね。
そのため、弱いと感じる自分に対して劣等感を抱えてしまうことも・・・。
ですが、社内で目立つ存在を目指す必要はないのです。(これは、HSPに限らずすべてのひとに言えること。)
あらためて、仕事をする上であなたが大切にしたいことを確認してください。
たとえば、
誠実に取り組むこと
最後までていねいにやり遂げること
人を大切にすること
などどんなことでもいいので書き出してみてください。
それがあなたの軸であり本質です。
ビジネスの世界では、自分の意見を強く主張する人やチームをグイグイ引っ張っていくような力強さを持った人が注目されがち。
でもすべての人がそうでなくていいし、自分が大切にしていることを軸にして、自分のカラーで仕事をしていいのです。
心の根っこにある不安が安心に変化していくことで、仕事へのあなたの軸がしっかり立ちHSPの気質も能力として発揮されます。
応援しています。
■ まとめ
・脳内で繰り広げられる思考パターンが悩みのもと。
・ネガティブな思考パターンは幼少期の親との関係により創られた。
・心の根っこのすり込みを手放して、本来の自分で生きていければ悩みは解決していく。
・HSPだから生きにくいわけじゃない。
・自分が本当に大切にしたいことを仕事で活かしていく。